新規事業開発は、企業の未来を切り拓く大きな可能性を秘めています。しかし現実には、その多くが期待通りの成果を上げられずに終わってしまいます。中小企業白書のデータによれば、新規事業を展開した企業の約86%が経常利益率の向上に至っていないという厳しい事実が報告されています。この背景には、技術・市場・人といった多様な要因が複雑に絡み合う「複合リスク」が存在します。
例えば、技術面では開発遅延やセキュリティ脆弱性、市場面では顧客ニーズの不一致や競合の圧力、人・組織面ではキーパーソン依存や意思決定の遅れといった課題が挙げられます。これらは単独で発生するだけでなく、相互に影響し合いながら事業の失敗を引き起こすことが少なくありません。
こうした状況において、リスクを体系的に洗い出し、発生確率と影響度を整理し、優先順位をつけて対応するための「リスクマップ」の活用が注目されています。本記事では、新規事業に特化したリスクマップの作成方法と、技術・市場・人の三領域における具体的な分析フレームワークを解説します。さらに、失敗の連鎖を防ぐためのシステム思考や未来を見据えたシナリオプランニング、日本企業の実例を交えながら、リスクを成長の糧とする実践的アプローチを紹介します。
新規事業に潜む複合リスクとは何か

新規事業の立ち上げは、企業にとって未来を切り拓く挑戦ですが、その成功率は決して高くありません。中小企業白書による調査では、新規事業を展開した企業のうち約86%が経常利益率の向上に至っていないとされています。つまり、大多数の企業は十分な成果を得られずに終わってしまうのです。その背景には、単一の要因ではなく、複数のリスクが絡み合う「複合リスク」の存在があります。
複合リスクは大きく「技術リスク」「市場リスク」「人・組織リスク」の3つの柱に分けられます。技術的な不確実性、市場の需要や競合環境、そして人材や組織文化といった要素が互いに影響し合い、新規事業の成否を左右します。例えば、開発が遅れて市場投入のタイミングを逃したり、優れた技術を開発しても市場が求めていなければ売上にはつながりません。さらに、意思決定の遅れやキーパーソンの離脱といった組織的な課題も深刻な影響を及ぼします。
具体的な事例として、2019年に発生したQRコード決済サービス「7pay」の失敗が挙げられます。二段階認証を導入していないなどの技術的脆弱性が不正アクセス被害を招き、市場からの信頼を一瞬にして失いました。その根底には、セキュリティに対する組織的な認識不足がありました。このように、技術・市場・人が連鎖的に作用して失敗に至るケースは珍しくありません。
逆に、CtoCフリマアプリ市場で成功したメルカリの事例は、複合リスクを適切に管理した好例です。メルカリはスマートフォンでの簡便性や匿名配送などで顧客の不安を解消し、市場の潜在ニーズを掘り起こしました。同時に、AIによる出品支援や不正検知といった技術を積極的に導入し、さらに失敗を恐れない組織文化を根付かせたことで成長を実現しました。
このように、新規事業の成否は単一の要素では決まりません。複合リスクを認識し、それぞれを統合的に管理することが、事業成功の鍵となります。特に変動性と不確実性が高い現代においては、リスクを「避ける」のではなく「理解し、適切に管理する」姿勢が重要です。
リスクマップの基本構造と作成ステップ
リスクマップは、新規事業に潜む多様なリスクを体系的に整理し、発生可能性と影響度の観点から優先順位をつけるための戦略ツールです。縦軸に「影響度」、横軸に「発生確率」を置いたマトリクスにリスクを配置することで、どのリスクに注力すべきかが一目で把握できます。特に不確実性の高い新規事業では、リスクマップが意思決定の羅針盤となります。
リスクマップ作成は次の5つのステップで進められます。
- リスクの特定(ブレインストーミング、専門家インタビュー、競合分析など)
- リスクの分析と評価(影響度と発生確率を5段階で数値化)
- リスクのマッピング(マトリクス上にプロットし、色分けで可視化)
- 対応戦略の策定(4象限ごとの戦略を設定)
- モニタリングと定期的な見直し(環境変化に合わせて更新)
特に重要なのが「目的基点」でのリスク特定です。単に「何がリスクか?」と問うのではなく、「事業目的の達成を阻害する要因は何か?」と考えることで、より具体的かつ本質的なリスクが浮かび上がります。
リスク対応の基本は、4つの象限に分類して適切な戦略を取ることです。
象限 | リスク特性 | 基本戦略 | 具体的アクション例 |
---|---|---|---|
A 高影響・高確率 | 致命的かつ頻発 | 回避・低減 | 計画の見直し、撤退判断、安全対策強化 |
B 高影響・低確率 | 致命的だが稀 | 移転・備え | 保険加入、業務委託、BCP策定 |
C 低影響・高確率 | 軽微だが頻発 | 低減・管理 | マニュアル整備、従業員教育、品質管理 |
D 低影響・低確率 | 軽微かつ稀 | 受容・監視 | 定期的なモニタリング |
このように分類することで、限られたリソースをどこに重点的に投下すべきかが明確になります。例えば、象限Aのリスクには最優先で対策を講じる必要がありますが、象限Dは受容して監視にとどめるのが効率的です。
さらにリスクマップは静的なものではなく、定期的に見直し続けることで初めて効果を発揮します。四半期ごとのレビューやマイルストーンでの評価更新を組み込み、常に最新の状態に保つことで、新規事業の変化に柔軟に対応できます。こうしてリスクマップを「生きたツール」として活用することが、持続的な成長に直結します。
技術リスクを評価するためのフレームワーク

新規事業において技術は最大の武器である一方、最も大きなリスク要因でもあります。計画通りに開発が進まず市場投入が遅れる、あるいは性能や品質が期待を満たさないといった問題は、事業全体を揺るがす可能性があります。特に革新的な技術を扱う場合、そのリスクはさらに増大します。
技術リスクを客観的に評価するためには「技術成熟度レベル(TRL)」が有効です。TRLはNASAが開発した指標で、基礎研究段階から実用化までを9段階で評価する仕組みです。これを導入することで、漠然とした懸念を具体的な課題として捉えることができます。
レベル | 段階 | 定義 |
---|---|---|
TRL1 | 基礎原理の観察 | 基礎研究の開始、原理の確認 |
TRL4 | 実験室での検証 | コンポーネントの実験室レベルでの試験 |
TRL7 | 実運用環境での実証 | 実際の使用環境でプロトタイプを検証 |
TRL9 | 実システムでの実運用 | 商用運用での成功実績 |
この指標を活用すれば、「自社の技術はTRL4の段階にあり、事業化にはTRL7が必要」というように、必要な開発ステップを具体的に把握できます。その結果、追加投資や開発環境の確保といったアクションプランを明確化できます。
また、技術的負債の存在も無視できません。スピードを重視して短期的な設計を優先すると、将来的に多大な改修コストが発生しやすくなります。さらに、セキュリティの脆弱性は事業そのものを終了に追い込むリスクを孕みます。
2019年の7pay事件では、二段階認証が導入されていなかったことが原因で大規模な不正利用が発生し、わずか3か月でサービス停止に追い込まれました。この事例は、基本的な技術リスク管理の欠如が致命的な結果をもたらすことを示しています。
新規事業では、技術の先進性を追い求めるだけでなく、開発スピードと安全性のバランスを取りながらリスクを評価することが求められます。TRLのような共通尺度を導入し、経営層と開発チームが同じ基準でリスクを議論できる体制を整えることが成功の条件となります。
市場リスクを見極めるための分析手法
どれほど優れた技術を開発しても、市場に受け入れられなければ新規事業は成立しません。米国の調査会社CB Insightsによれば、スタートアップが失敗する最大の理由は「市場ニーズがなかった」であり、全体の35%を占めています。日本でも「市場性や成長性が期待ほどでなかった」という理由は失敗の上位に挙げられています。つまり、市場リスクを正確に見極めることは事業成功の必須条件です。
市場リスクを評価するための代表的な手法は以下の3つです。
- TAM・SAM・SOM分析による市場規模の把握
- ファイブフォース分析による競争環境の評価
- 顧客受容性調査によるニーズの検証
TAM(獲得可能な最大市場)、SAM(提供可能市場)、SOM(実際に獲得可能な市場)を分けて分析することで、短期・中期・長期の視点で市場性を測ることができます。さらに、業界の収益性を左右する5つの要因(既存競合、新規参入、代替品、買い手、売り手)を評価するファイブフォース分析を行えば、競争構造の厳しさを明確にできます。
分析手法 | 目的 | 活用例 |
---|---|---|
TAM・SAM・SOM | 市場規模の把握 | 中長期の収益見通しを立てる |
ファイブフォース | 業界構造の理解 | 参入障壁や競合の脅威を把握 |
顧客受容性調査 | ニーズ検証 | 購入意向や価格受容性を確認 |
さらに、Webアンケートや会場調査を通じて実際の顧客反応を確認することで、「作っても売れない」リスクを事前に減らせます。例えば、購入意向や価格許容度を数値化すれば、コンセプトが市場に適合しているかを早期に判断できます。
市場リスクの本質は「市場の広さ」「競争の厳しさ」「顧客の反応」という3つの視点を組み合わせることで見えてきます。メルカリはスマホ時代に合致した簡便性という新しい価値を打ち出し、競合が強かったヤフオクとの差別化に成功しました。このように、市場リスクを多角的に分析し、需要のある領域を正しく見極めることが成功の鍵となります。
人・組織リスクを可視化するスキルマップ活用法

新規事業の成否は技術や市場だけでなく、人と組織の力に大きく依存します。特に少人数でスタートするプロジェクトでは、メンバーのスキルや役割分担の偏りがリスクとして顕在化しやすくなります。例えば、エンジニアに過度に依存している場合、その人材が離脱すれば開発が停滞し、事業全体に深刻な影響を及ぼしかねません。
こうした人・組織リスクを可視化するために有効なのが「スキルマップ」です。スキルマップは、各メンバーの専門性や経験を一覧化し、強みと弱みを明確に把握するツールです。これにより、チームがどの領域に強みを持ち、どの領域に不足があるのかが一目でわかります。
メンバー | 技術スキル | 市場理解 | マネジメント | 営業・交渉力 |
---|---|---|---|---|
A氏 | 高 | 中 | 低 | 低 |
B氏 | 中 | 高 | 高 | 中 |
C氏 | 低 | 中 | 低 | 高 |
このような表を用いることで、例えば「営業力はC氏に依存しているため、他のメンバーの育成が必要」といった具体的な課題を把握できます。さらに、定期的にスキルマップを更新することで、組織の成長と共にリスクの変化を追跡できます。
実際に、新規事業で成功を収めている企業の多くは、人材リスクを早期に見極める仕組みを整えています。あるスタートアップでは、全社員のスキルを一覧化した「人材ダッシュボード」を作成し、外部パートナーを含めた最適な体制を構築しました。その結果、急成長期における人材不足を迅速に補い、組織の拡張に成功しました。
また、スキルマップは採用戦略や人材育成にも活用できます。不足領域を明確にすれば、重点的に採用すべき人材像が浮かび上がりますし、既存メンバーの教育計画も具体的に立てやすくなります。特に新規事業はスピードが求められるため、即戦力人材の採用と育成の両面でスキルマップの存在は大きな意味を持ちます。
新規事業における人・組織リスクは、目に見えない分、放置されやすいのが実情です。スキルマップを通じてチーム全体を俯瞰し、依存関係や弱点を早期に把握することが、長期的な成功への第一歩となります。
リスクの相互作用と失敗の連鎖を防ぐシステム思考
新規事業のリスクは、個別に発生するだけでなく、複数のリスクが連鎖して深刻な失敗を招くことがあります。例えば、技術開発の遅延が市場投入の遅れにつながり、その結果、競合に先行されてシェアを失う。さらに資金繰りが悪化し、人材流出を引き起こすといった連鎖です。このような「失敗のドミノ倒し」を防ぐには、リスクの相互作用を俯瞰するシステム思考が求められます。
システム思考では、事業を一連の要素が相互に影響し合うシステムとして捉えます。その中で「因果ループ図」を用いることで、リスクがどのように作用し合うのかを視覚的に把握できます。
- 技術リスク → 開発遅延 → 市場投入の遅れ
- 市場リスク → 売上不振 → 資金不足
- 人・組織リスク → キーパーソン離脱 → 開発停滞
このように因果関係を整理すれば、「技術リスクを軽減すれば資金リスクも同時に緩和できる」といった全体最適の視点が得られます。個別リスクへの場当たり的対応ではなく、相互作用を意識した戦略が重要です。
実際に、ハーバード・ビジネス・レビューでも「新規事業の失敗は単一要因よりも複合要因の連鎖で発生する」という研究が報告されています。特に、外部環境の変化や内部のコミュニケーション不足が重なると、リスクの影響は増幅されやすくなります。
日本企業の事例では、大手電機メーカーが新規事業でクラウドサービスを立ち上げた際、初期段階で技術仕様の変更が頻発し、発売が遅れました。その結果、海外勢に市場を奪われ、収益化の遅れから人員削減に踏み切ることになりました。これは典型的なリスク連鎖の失敗例といえます。
逆に、成功している企業はシステム思考を取り入れ、複合リスクを事前にシミュレーションしています。ある製薬企業では、新薬開発における臨床試験の遅延が資金繰りに直結するリスクを可視化し、複数の資金調達ルートを確保しました。結果的に開発遅延が発生しても、資金難に陥ることなく事業を継続できました。
新規事業は必然的にリスクが多い取り組みです。しかし、リスクの相互作用を俯瞰し、連鎖を断ち切る仕組みを持つことで、失敗を未然に防ぐことが可能です。システム思考を導入することは、複雑な時代における事業成功の必須条件といえるでしょう。
シナリオプランニングで不確実な未来に備える
新規事業においては、技術革新や市場の急変、規制変更など、予測不可能な要素が多く存在します。これらの変化に柔軟に対応するために注目されているのが「シナリオプランニング」です。シナリオプランニングとは、未来を一つの予測に限定せず、複数の可能性を描き出し、そのそれぞれに対応する戦略を準備する方法です。
特徴的なのは「不確実性の高い変数」を軸にシナリオを構築する点です。たとえば、エネルギー業界では「脱炭素政策の進展速度」と「再生可能エネルギー技術の普及度」を軸にした4つの未来像を描き、それぞれに備える戦略を策定しています。新規事業においても、AI技術の進化スピードや消費者価値観の変化といった要因を変数にすることで、将来の可能性を多角的に考えることができます。
変数 | 極端なケースA | 極端なケースB |
---|---|---|
技術進化 | 急速に進展 | 停滞または遅延 |
消費者価値観 | サステナビリティ重視 | コスト優先 |
規制環境 | 厳格化 | 緩和 |
このように複数の軸を組み合わせることで、異なるシナリオを導き出し、それぞれに対してリスクと機会を整理します。特に、新規事業では「最も起こりやすい未来」だけでなく「起こった場合の影響が大きい未来」に備えることが重要です。
実際にロイヤル・ダッチ・シェルは1970年代からシナリオプランニングを活用しており、石油危機やエネルギー需要の変動に柔軟に対応してきました。日本企業でも製造業や金融業を中心に導入が進んでおり、新規事業開発の現場で活用する動きが広がっています。
新規事業におけるシナリオプランニングの意義は、単に未来を予測することではありません。複数の未来像を描くことで、意思決定者に「不確実性を受け入れ、柔軟に対応する姿勢」を持たせる点にあります。これにより、突然の市場変化や競合の動きにも、慌てることなく対応できる強靭な組織づくりが可能になります。
日本企業の成功・失敗事例から学ぶリスク管理の実践知
理論やフレームワークだけではなく、実際の企業事例から学ぶことは新規事業開発において非常に重要です。日本企業には成功と失敗の両面で多くの事例があり、それらはリスク管理の実践知を提供してくれます。
失敗事例として代表的なのが、大手電機メーカーのクラウド事業参入です。技術的には優れていたものの、サービス投入が遅れたことで海外勢に市場を奪われ、結果として収益化に至らず撤退を余儀なくされました。これは技術リスクと市場リスクが連鎖的に作用した典型的な例です。また、組織内の意思決定が遅く、競争環境の変化に対応できなかったことも要因とされています。
一方、成功事例としてはソニーのイメージセンサー事業が挙げられます。ソニーは2000年代初頭、半導体部門の不振から撤退を検討するほどの状況にありました。しかし、成長市場を見据えたリスクテイクと継続的な技術投資を行い、スマートフォンの普及とともに世界シェアを拡大しました。ここでは、長期的視点でのリスクマネジメントと市場変化を捉える洞察力が功を奏しました。
さらに、国内スタートアップの事例では、BASE株式会社の成功が参考になります。ECサイト構築サービスとしてリリースされたBASEは、初期段階でシステム障害や利用者の不安が課題となりましたが、透明性の高い情報発信とサポート体制の強化により信頼を獲得しました。その結果、競合が多い市場でありながら順調に成長し、上場企業へと成長しています。これは、リスクを完全に排除するのではなく、適切に管理し顧客との信頼関係を築くことの重要性を示しています。
これらの事例から見えてくる教訓は、リスクを単に「避けるべきもの」と考えるのではなく、「事前に把握し、コントロール可能な形にする」ことが重要だという点です。失敗からはリスクを軽視した場合の危険性を、成功からは不確実性に挑戦する姿勢と柔軟な対応力の重要性を学ぶことができます。新規事業の現場では、このような実践知を参考にしながら、自社に適したリスクマネジメントを築くことが求められます。
リスクを成長の糧に変える組織文化とリーダーシップ
新規事業の現場では、失敗を完全に避けることは不可能です。むしろ重要なのは、失敗やリスクから学び、それを成長の糧にできる組織文化を育むことです。近年の研究でも、心理的安全性の高い組織ほど新規事業の成功率が高まることが示されています。メンバーが自由に意見を出し合い、失敗を責められない環境が整っていることが、新しい挑戦を生み出す基盤となります。
組織文化を変革する上で鍵を握るのはリーダーシップです。トップが率先してリスクに向き合い、透明性のあるコミュニケーションを行うことで、メンバーも挑戦しやすくなります。特に、日本企業では失敗を避ける文化が根強く存在しますが、リーダーが「失敗を恐れず挑戦する姿勢」を示すことで、組織全体の行動が変わります。
- 心理的安全性を確保する仕組みを導入する
- 失敗事例を共有し、学びを全体で活かす
- リーダー自身が不確実性に挑む姿勢を示す
- 成功だけでなく挑戦そのものを評価する
このような取り組みを行うことで、リスクは単なる脅威ではなく、学びと成長の機会へと変わります。
事例として注目されるのが、トヨタの「カイゼン文化」です。トヨタは小さな失敗を現場で共有し、改善策を積み重ねることで組織全体の競争力を高めてきました。新規事業においても同じ考え方が応用でき、実験と改善を繰り返すプロセスが事業成功に直結します。また、楽天の三木谷浩史氏は「挑戦の中でしか成長はない」と語り、積極的に社員に新しい事業領域への挑戦を促しています。このようなリーダーの姿勢が、企業の成長エンジンとなっています。
加えて、リスクを糧に変えるためには評価制度の見直しも不可欠です。売上や利益といった短期的な成果だけを基準とするのではなく、挑戦の過程や学びを評価対象に含めることで、メンバーは安心してリスクを取れるようになります。例えば、失敗したプロジェクトで得られた知見を社内共有し、次のプロジェクトに活かしたケースを高く評価する仕組みを導入すれば、挑戦を促進する文化が根づきます。
新規事業は不確実性が高いからこそ、リスクを「成長の種」と捉える文化が不可欠です。リーダーがその姿勢を示し、組織全体に浸透させることで、挑戦を恐れない風土が生まれます。その結果、企業は変化の激しい環境の中でも進化を続け、持続的な成長を実現できるのです。