新規事業を検討する中で、「自社の強みをデジタルでどう拡張すべきか」「メタバースや3D技術は本当に事業になるのか」と悩んだ経験はありませんか。特に2026年を見据えた今、単なる実験ではなく、持続的に収益を生む新規事業モデルが求められています。

その問いに対し、世界で最も示唆に富む事例の一つがEpic Gamesです。同社はFortniteで知られるゲーム企業でありながら、Unreal Engineを中核に、建設、自動車、アニメ、ブランドマーケティングへと事業領域を拡張し、産業インフラそのものへ進化しています。

本記事では、Epic Gamesのエコシステム戦略を起点に、クリエイターエコノミー、産業用デジタルツイン、HMI、プラットフォーム規制といった観点から、新規事業開発に活かせる具体的な示唆を整理します。日本企業の実例も交えながら、次の一手を考えるための実践的な視点を提供します。

Epic Gamesはなぜゲーム会社を超えた存在になったのか

Epic Gamesがゲーム会社の枠を超えた最大の理由は、自社の企業ドメインを「ヒット作を生むゲーム開発」から「リアルタイム3D技術を基盤とする産業プラットフォーム」へと再定義した点にあります。創業者兼CEOのTim Sweeney氏は一貫して、リアルタイム3Dは次世代インターネットと産業DXの共通言語になると主張してきました。その結果、Epicはゲームを作る企業ではなく、あらゆる産業が仮想と現実を接続するための基盤を提供する存在へと進化しました。

この変化を支えているのが、複数事業が相互に価値を高め合うフライホイール構造です。Fortniteで生み出された収益と数千万規模のユーザーデータはUnreal Engineの研究開発に再投資され、進化したエンジンが再び高品質な体験と新たな利用領域を生みます。Matthew Ball氏などの業界アナリストも、Epicの競争優位は単一プロダクトではなく、この循環構造そのものにあると指摘しています。

要素 役割 戦略的意味
Unreal Engine リアルタイム3Dの共通基盤 ゲーム外産業への水平展開を可能に
Fortnite 巨大な実験場兼収益源 技術検証とユーザー行動データを獲得
Epic Games Store 流通プラットフォーム 開発者経済圏の拡張と囲い込み回避

特に重要なのは、Epicが意図的に「囲い込み」を避けてきた点です。Epic Online Servicesを無料で提供し、他社エンジンや他社プラットフォームとの相互運用性を重視する姿勢は、一見すると短期収益を犠牲にする戦略に見えます。しかしこれは、市場全体を拡大させた上で、自社が不可欠な基盤になるという長期視点に基づいています。

この結果、Epicの技術はゲーム業界を越えて、自動車、建設、映像、ファッションといった領域に浸透しました。日本でもトヨタ自動車や大手ゼネコンがUnreal Engineを中核技術として採用しています。Epic Gamesが「ゲーム会社を超えた存在」と評価されるのは、ヒット作の有無ではなく、産業全体の価値創造プロセスそのものを再設計している点に本質があるためです。

フライホイール構造に見るEpic Gamesの新規事業モデル

フライホイール構造に見るEpic Gamesの新規事業モデル のイメージ

Epic Gamesの新規事業モデルを理解する上で中核となるのが、複数事業が相互に回転し続けるフライホイール構造です。これは単なる事業ポートフォリオではなく、収益・技術・ユーザーデータが循環的に再投資される自己強化型の仕組みとして設計されています。

この構造の起点にあるのがFortniteです。Fortniteは月間7,000万〜8,000万人規模のアクティブユーザーを抱える巨大なソーシャル空間であり、アイテム課金やバトルパスによる継続的なキャッシュフローを生み出しています。Matthew Ball氏の分析によれば、この安定収益がEpicの長期投資を可能にしていると指摘されています。

そこで得られた資金と運営知見は、Unreal Engineの研究開発へと還流します。Fortnite自体がUnreal Engineの最大級の実証環境として機能しており、リアルタイムレンダリングやネットワーク最適化などの改善点が即座にプロダクトへ反映されます。自社サービスを実験場にすることで、外部開発者向けツールの競争力を高めている点が特徴です。

フライホイール要素 主な役割 次への回転力
Fortnite ユーザー基盤と収益創出 資金とデータをUE開発へ
Unreal Engine 技術基盤の高度化 高品質コンテンツを誘発
Epic Games Store 流通と開発者獲得 エコシステム拡大
Epic Online Services 共通インフラ提供 参加障壁の低下

進化したUnreal Engineは、ゲーム分野にとどまらず、映像制作、建設、自動車といった非ゲーム産業へと採用が広がります。産業用途ではロイヤリティではなくシートライセンスを提供することで、短期収益よりも導入拡大を優先する戦略が取られています。これにより、Epicの技術が事実上の業界標準として定着しやすくなります。

さらにEpic Games Storeは、業界慣行であった30%手数料に対し12%という低率を提示することで、開発者の参加インセンティブを高めています。これはストア単体での利益最大化ではなく、Unreal EngineやFortniteへと人材とコンテンツを呼び込むための加速装置として位置づけられています。

Epic Online Servicesを無料で提供している点も重要です。クロスプレイや認証といった基盤機能を開放することで、競合エンジンの開発者さえもEpicのインフラを利用する状況を生み出しています。Tim Sweeney氏が繰り返し語るように、囲い込みではなく相互運用性を高めることが、結果としてフライホイールを大きくするという思想が貫かれています。

新規事業開発の観点で注目すべきは、このフライホイールが単一事業の成功に依存しない点です。どこか一つの回転が弱まっても、他の要素が補完し合い、全体として回り続ける設計になっています。Epic Gamesはこの構造によって、長期視点で産業プラットフォームへ進化する余地を確保しているのです。

UEFNとCreator Economy 2.0が切り開く新しい収益化

UEFNとCreator Economy 2.0がもたらした最大の変化は、ゲーム内体験そのものが持続的な収益源へと転換された点にあります。Epic Gamesは2023年、Fortniteの純収益の40%をクリエイター向けのエンゲージメント配当プールに割り当てる新モデルを正式に導入しました。これは広告枠やアイテム販売に依存せず、プレイヤーがどれだけ深く、長く体験に没入したかを評価軸とする点で、従来のデジタル収益モデルと一線を画しています。

Epic Games Developersの公式ドキュメントによれば、配当算定にはプレイ時間、新規ユーザーの流入、継続率など複数の指標が組み合わされます。つまり「売る力」よりも「遊ばせ続ける設計力」が収益を左右する構造です。この設計思想は、ブランドや新規事業にとって極めて重要です。商品訴求を前面に出さなくとも、世界観やストーリーへの没入そのものがマネタイズ対象になるからです。

実際、業界アナリストの調査では、Fortnite Creativeの上位層クリエイターの中に年収1,000万ドル超が複数存在し、年間2,000万円以上を稼ぐ層が全体の約4%に達しています。UGCが副業ではなく、独立したプロフェッショナル市場として成立している点は、新規事業開発の視点でも見逃せません。

項目 UEFN / Creator Economy 2.0 従来型UGCプラットフォーム
収益源 体験へのエンゲージメント アイテム課金・広告
評価指標 プレイ時間・定着率 購入数・クリック数
企業活用の適性 ブランディング・世界観構築 短期販促

Robloxなど競合と比較しても、この違いは明確です。Robloxはマイクロトランザクション中心で、開発者の実質還元率が20%台に留まると指摘されています。一方Fortniteでは、プレイヤーの時間を奪うほど価値が生まれるため、完成度の高い3D空間や演出に投資する合理性が生まれます。UEFNがUnreal Engine 5をベースにしている点も、高品質化を後押ししています。

新規事業の文脈で重要なのは、UEFNが単なる収益手段ではなく、マーケティングと事業開発を一体化する装置になっていることです。広告費として消えていた予算が、体験資産として蓄積され、さらに配当として回収される可能性がある。この循環構造こそが、Creator Economy 2.0が切り開いた新しい収益化の本質だと言えます。

Nike・BMWに学ぶメタバース型マーケティングの実像

Nike・BMWに学ぶメタバース型マーケティングの実像 のイメージ

メタバース型マーケティングの最前線を理解するうえで、NikeとBMWの取り組みは極めて示唆に富んでいます。両社に共通するのは、メタバースを単なる広告配信の場ではなく、ブランド体験そのものを設計する空間として捉えている点です。Epic GamesのUEFNを活用することで、従来のデジタル施策では到達できなかった没入度と滞在時間を実現しています。

Nikeの「Airphoria」は、Air Maxの世界観を浮遊都市として再構築し、プレイヤーが探索やスニーカーハントを通じてブランドの歴史や思想に触れる体験を提供しました。Unreal Engineによる高精細なデジタルツイン表現は、実物製品に近い質感を再現し、Nikeのグローバルクリエイティブディレクターが語るように、広告ではなくストーリーテリングの進化形として機能しています。Fortniteの月間数千万人規模のユーザー基盤を背景に、Z世代・α世代との自然な接点を生み出しました。

一方、BMWの「Hypnopolis」は、新型EV iX2のローンチプロセス自体をゲーム体験へと変換しています。発売前はカモフラージュ状態の車両を用い、プレイヤーがCar Creatorでカスタマイズすることで期待感を醸成し、リアルのワールドプレミアと同時に制限を解除する演出を採用しました。これは、現実と仮想のタイムラインを同期させた好例であり、若年層に対するプロダクト理解を遊びながら刷り込む設計といえます。

ブランド 主目的 メタバース上の設計思想
Nike ブランド世界観の深化 製品の物語化とデジタルアイデンティティの付与
BMW 新車ローンチの再発明 現実と連動した段階的情報開示と参加型体験

両事例から読み取れる本質は、メタバース施策のKPIがクリック率やCVではなく、滞在時間、再訪率、感情的な記憶へとシフトしている点です。学術的にも、没入型体験はブランド想起と好意度を高めることが示されており、ハーバード・ビジネス・スクールの研究でも体験価値が長期的な顧客関係に寄与することが指摘されています。

新規事業開発の視点では、NikeやBMWの成功は「メタバース=新チャネル」ではなく、プロダクト開発・ブランド戦略と一体化した設計思想にあります。UEFNのようなプラットフォームを活用することで、マーケティングはコストではなく、将来の顧客資産を育てる投資へと転換しつつあります。

日本の建設業を変える産業用デジタルツインの最前線

日本の建設業では、人手不足と高齢化、複雑化する施工条件という構造課題に対し、産業用デジタルツインが現実的な解決策として急速に浸透しています。特にUnreal Engineを中核としたリアルタイム3D技術は、従来のBIMやCGでは不可能だった「現場をそのまま再現し、動かし、判断できる」環境を実現しています。

象徴的なのが、大林組によるデジタルツイン基盤の実装です。横浜環状南線の鉄道橋建設では、BIMデータとUnreal Engineを連携させ、MRを通じて施工状況を可視化しました。クラウド経由で同一の3D空間を共有することで、現場作業員と遠隔地の技術者が同じ視点で議論でき、設計変更や施工判断のスピードが大幅に向上しています。英国王立測量士協会が指摘するように、こうしたリアルタイム連携は建設プロジェクトの手戻りコスト削減に直結します。

活用領域 従来手法 産業用デジタルツイン
設計検討 静止画CG・模型 リアルタイム3Dでの即時検証
施工管理 紙・2D図面中心 現場と同期した3D可視化
安全対策 過去事例ベース 仮想空間での事前シミュレーション

竹中工務店では、人流シミュレーションとIoTデータを組み合わせたデジタルツインが進化しています。設計段階で群衆行動をAIで再現し、混雑や避難リスクを視覚的に評価する手法は、国土交通省が推進するi-Constructionの方向性とも一致します。さらに運用フェーズでは、建物内センサーのデータをリアルタイム反映させ、エネルギー管理や設備保全を自動化しています。

鹿島建設のA4CSELが示すのは、デジタルツインが「制御」の領域に入ったという事実です。自律施工機械のアルゴリズムを仮想空間で検証し、安全性を担保した上で実機に展開するSim-to-Realの手法は、米国のロボティクス研究でも有効性が確認されています。日本の建設業における産業用デジタルツインは、もはや可視化ツールではなく、生産性と安全性を同時に引き上げる経営基盤へと進化しています。

自動車HMIの進化とソニー・ホンダ・トヨタの挑戦

自動車HMIは今、大きな転換点を迎えています。従来のHMIはナビやメーターを分かりやすく表示することが主目的でしたが、EV化とSDVの進展により、**車内体験そのものが競争力の源泉**になりつつあります。この流れを象徴するのが、ソニー・ホンダモビリティとトヨタの取り組みです。

ソニー・ホンダモビリティが開発するAFEELAは、Unreal Engineを中核に据え、車内外を統合したHMIを構築しています。パノラマスクリーンに表示される3Dマップは、高精度地図とセンサー情報をリアルタイムで合成し、天候や光の反射まで再現します。Unreal Festでの技術解説によれば、これは単なる視覚表現ではなく、ADASの挙動を直感的に理解させる安全設計でもあります。

さらに特徴的なのが、フロントグリルのMedia Barです。車が外部とコミュニケーションするインターフェースとして機能し、モビリティを「走るデバイス」から「社会と対話する存在」へと拡張しています。**エンターテインメント企業であるソニーの強みを、HMIという形で車両価値に転換している点**は、新規事業の観点でも示唆に富みます。

企業 HMIの主眼 Unreal Engineの役割
ソニー・ホンダモビリティ 没入型UXと車内外統合 リアルタイム可視化と統合制御
トヨタ自動車 開発効率と人間工学 VRによる設計・HMI検証

一方トヨタは、より上流工程にUnreal Engineを組み込んでいます。DEVELOP3Dによれば、デザイン初期からVRで視認性や操作性を検証し、物理的なクレイモデル前の段階で課題を洗い出しています。HMIデザインもデザイナー主導で高速にプロトタイピングでき、試行錯誤の回数自体が競争優位になっています。

両社に共通するのは、HMIを単なるUIではなく、**価値創出のプラットフォーム**として捉えている点です。自動車HMIの進化は、製品差別化だけでなく、ソフトウェア更新やサービス連携を前提とした新たな事業モデルを可能にします。新規事業開発の視点では、HMIはもはや設計の一要素ではなく、顧客接点そのものだと言えるでしょう。

Disneyとアニメ産業に見るIP×Unreal Engine戦略

Disneyとアニメ産業におけるUnreal Engine活用は、IPビジネスの重心を「制作」から「運営」へと移行させる戦略として注目されています。象徴的なのが、2024年に発表されたThe Walt Disney CompanyによるEpic Gamesへの15億ドル出資です。ディズニーはこれを単なる財務投資ではなく、Fortniteと接続された永続的ユニバース構想の基盤と位置づけています。

この戦略の本質は、IPを一過性のコンテンツ消費ではなく、継続的に滞在・更新されるデジタル空間として再定義する点にあります。Disney、Pixar、Marvel、Star WarsなどのIPは、映画や配信作品の公開タイミングに縛られず、常時アップデートされる体験として存在し続けます。Epic Gamesの発表によれば、アバターやデジタル資産の相互運用性も視野に入れられており、ユーザーは複数IPを横断して体験を蓄積していく設計です。

Fortnite内で公開された「Disneyland Game Rush」は、その概念実証にあたります。ここではアトラクションを模したミニゲームが提供され、テーマパーク的体験をゲーム文脈に翻訳しています。ゲームメディアや業界アナリストの分析では、これは将来の「メタバース上のテーマパーク」運営モデルの試金石と位置づけられています。

観点 従来型IP活用 Unreal Engine活用後
体験の持続性 公開期間限定 常時運営・更新
収益機会 興行・配信中心 滞在時間・参加度連動
ユーザー接点 視聴が中心 参加・共創型

一方、日本のアニメ産業でもUnreal Engineは制作DXとIP拡張の両面で機能しています。東映アニメーションの『ガールズバンドクライ』は、UE5を用いたフルCG制作により、セルルックを保ちながらリアルタイム調整を可能にしました。制作現場では、監督や演出家がその場で照明やカメラを変更し即座に確認できるため、試行錯誤の密度が飛躍的に向上したと公式情報で語られています。

重要なのは、この制作手法が将来的なIP二次展開と直結する点です。ゲームエンジン由来のアセットは、そのままゲーム、ライブ演出、メタバース空間へと再利用できます。ソニーPCLのバーチャルプロダクション事例でも指摘されているように、映像とインタラクティブ体験の境界は急速に薄れています。

ディズニーと日本アニメの事例が示す共通項は、Unreal EngineをIPの共通言語として採用することで、制作・配信・体験運営を一気通貫で設計できる点です。新規事業開発の観点では、IPを「作って終わり」にしないための技術的・組織的基盤として、UEを中心としたエコシステム設計が競争力の源泉になりつつあります。

Fabとアプリストア規制がもたらす新規事業の機会

Fabとアプリストア規制は、既存プレイヤーの力学を変えるだけでなく、新規事業にとって極めて具体的な参入機会を生み出しています。ポイントは、デジタルアセット流通とモバイル配信の二つのレイヤーが、同時に「開かれた市場」へ移行しつつある点にあります。

まずFabがもたらす機会です。FabはUnreal Engine専用マーケットではなく、UnityやRobloxなども含むツール中立型のアセット流通基盤として設計されています。Epic Gamesの発表によれば、クリエイターへの還元率は88%と業界標準を大きく上回っており、これは単なる価格競争ではなく、良質な供給を呼び込むための市場設計だと読み取れます。

観点 従来型マーケット Fab
対象エンジン 単一または限定的 複数エンジン横断
手数料 約30% 12%
主な価値 販売の場 産業横断の供給網

この構造は、新規事業に二つの道を開きます。一つは、ゲーム用途に限らない産業向けアセット事業です。建設、製造、教育、広告といった分野で使われる3Dモデルやシミュレーション用素材をFab経由でグローバル展開することで、**従来は個別受託で終わっていた制作物をスケーラブルなプロダクトへ転換**できます。MITやスタンフォード大学が指摘するように、デジタルツイン市場では再利用可能な部品化が価値創出の鍵になっています。

もう一つは、Fabを前提とした周辺サービス事業です。アセットの品質保証、法務チェック、企業向けカスタマイズ支援など、マーケット自体が拡大するほど必要となるB2B支援領域は未成熟であり、日本企業が強みを持つ運用・品質管理の知見を活かしやすい領域です。

**Fabは「売る場所」ではなく、「産業横断のデジタル部品市場」であり、その周辺にこそ新規事業の余白があります。**

次にアプリストア規制です。日本で成立したスマホソフトウェア競争促進法は、AppleやGoogleに対し、サードパーティストアや外部決済の妨害を禁じています。早稲田大学の法学研究者によれば、これはEUのDMAと同等水準の競争環境を国内にもたらすものと評価されています。

Epic Gamesが2025年後半にiOS向けEpic Games StoreとFortniteを再投入すると表明したことで、現実的な選択肢が生まれました。手数料12%のストア、あるいは自社決済を組み合わせることで、**モバイル事業の利益構造そのものを再設計できる**状況が整いつつあります。

新規事業の観点では、単にストアを切り替える発想では不十分です。複数ストア前提の配信設計、価格や課金モデルの最適化、Webとアプリを横断した顧客接点の設計など、配信レイヤーを含めた事業アーキテクチャ全体を再構築できるかが問われます。Fabによる供給網の開放と、アプリストア規制による配信網の開放が同時に進む今は、**デジタル事業を根本から作り直す稀有なタイミング**だと言えるでしょう。

新規事業開発担当者が今すぐ考えるべき実践ポイント

新規事業開発担当者が今すぐ考えるべき実践ポイントは、Epic Gamesの事例が示すように「技術導入」ではなく「事業設計」にリアルタイム3Dとエコシステム思考を組み込むことです。Unreal EngineやFortniteはツールではなく、価値創出の土壌として機能しています。そのため、PoC止まりで終わらせない視点が不可欠です。

第一に、収益モデルから逆算して体験を設計することが重要です。UEFNでは、Fortnite純収益の40%がエンゲージメントに応じて配分されます。Epic Gamesの開示によれば、評価指標はプレイ時間や継続率、新規ユーザー獲得です。つまり「何を売るか」よりも「どれだけ滞在し、再訪したくなるか」をKPIに据える必要があります。

設計観点 従来型 Epic型
価値の源泉 販売数量 体験時間・没入度
KPI CV・売上 滞在時間・リテンション

第二に、単発施策ではなくフライホイールを描くことです。EpicではFortniteの収益がUnreal Engineの進化を支え、その技術が異業種DXに再利用されます。新規事業でも、顧客接点で得たデータや知見を次のプロダクトや改善に循環させる設計がなければ、継続的成長は望めません。

第三に、外部クリエイターや既存エコシステムを前提にする姿勢です。Matthew Ball氏が指摘するように、オープンなプラットフォームほど長期的な価値は拡張します。自社だけで完結させず、UEFNクリエイターや外部開発者が参加できる余地を残すことで、事業は加速度的に進化します。

新規事業を成功させる鍵は、完璧な計画ではなく小さく始め、データが次の一手を教えてくれる構造を持つことです。Epic Gamesの実践は、その現実的な道筋を示しています。

参考文献